音は耳介で集められ外耳道を通り鼓膜に到達し鼓膜を振動させます。
外耳道の炎症が難聴の原因になることがありますが、軽度のことがほとんどです。耳垢も高度になれば難聴を起こします。
中耳腔に起こる炎症が中耳炎です。耳管を介して鼻の炎症が波及して起こります。風邪に引き続き、鼻の炎症が中耳に波及して起こるのが急性中耳炎です。子供に起こり易く難聴より耳痛が問題となります。急性中耳炎の治療は日本耳科学会による小児急性中耳炎診療ガイドラインに基づく治療が推奨されます。急性中耳炎が治りにくかったり(遷延化)、繰り返した(反復性)場合、滲出性中耳炎に移行することがあります。滲出性中耳炎は急性中耳炎や上気道感染症(いわゆる“かぜ”)続く中耳の感染・炎症をきっかけとして、耳と鼻をつなぐ管である耳管の機能の低下や同時に存在する鼻副鼻腔炎.アレルギー性鼻炎の影響をうけて発症するとされています。治療は日本耳科学会による小児滲出性中耳炎診療ガイドラインに基づく治療が推奨されます。
滲出性中耳炎は自然に治ることも多い中耳炎で、治療は経過観察が第1選択となります。滲出性中耳炎に効果のある薬物はないとされており、単純な経過観察が基本ですが、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎や扁桃炎がある場合はそれらの治療も併用する必要があります。3か月を超えて滲出性中耳炎が持続する場合、鼓膜チューブ留置術が必要となります。
滲出性中耳炎の鼓膜所見(*鼓膜を通して貯留液がアメ色に見える)
慢性中耳炎の鼓膜所見(*鼓膜の大きな穿孔)
鼓膜を介し耳小骨に伝わった振動は前庭窓から内耳の蝸牛に入ります。蝸牛はリンパ液で満たされており耳小骨の振動はリンパ液の波(進行波)となり蝸牛の中を伝わります。
蝸牛は3階の構造をしています。1階と3階は蝸牛の頂点でつながっています。3階は前庭階とよばれ前庭窓を通じて中耳腔とつながり、耳小骨のアブミ骨がはまり込んでいます。鼓膜・耳小骨と伝わってきた音の振動は前庭階の外リンパ液の波(進行波)となり前庭階を蝸牛の頂きに向かい進んでいきます。前庭階を進んできた進行波は蝸牛の頂きで1階の鼓室階へと伝わっていき、蝸牛の基底へ伝わっていきます。その後蝸牛窓の膜(第2鼓膜と呼ばれる)の振動を介して音の進行波は鼓室へと抜けていきます。
蝸牛に起こったリンパ液の波(進行波)は前庭階と鼓室階にはさまれた蝸牛管(内リンパ腔)にある感覚細胞(有毛細胞)を刺激します。その結果感覚細胞に反応が起こり、電気信号が発生し、神経を伝わります。わたしたちはこの電気信号を大脳皮質で知覚しています。感覚細胞の障害による難聴を内耳性難聴、感覚細胞に連なる聞こえの神経の障害による難聴を後迷路性難聴といい、両者を合わせて感音性難聴と呼びます。感音性難聴を引き起こす疾患は数多く、原因不明のものも少なくありません。
気導聴力検査
骨導聴力検査
気導聴力検査と骨導聴力検査の結果を示したグラグをオージオグラム(聴力図)といいます。
図のオージオグラムは右の正常聴力者の結果です。
気導、骨導閾値の差(気骨導差)が認められません。
このような難聴を感音難聴といいます。
この図では気導閾値が低下し、骨導閾値も低下しています。
標準純音聴力検査結果の解釈
①難聴の程度
混合性難聴は伝音難聴を起こす病気と感音難聴難聴を起こす病気が合併して起こるものです。中耳炎の炎症が内耳に及ぶ場合などがこれにあたります。
補聴器は難聴の方に音の情報を伝え、コミュニケーションや日常生活を助けるものです。